公正証書遺言作成の当日の進行

遺言公正証書(一般に公正証書遺言と言われている)を作成する場合、事前に文案を確定しておき、作成当日に遺言者本人が公証役場に出向きます。

さて、その当日の公証役場での進行が気になる方がいらっしゃるようなので、ご紹介します。

なお、2件紹介しますが、2件とも事前に戸籍謄本や印鑑証明書を提出済であり、文案も確定させてあります。また、公証役場に証人2名を用意していただいています。

A公証役場の場合

  1. 約束の時間の少し前に公証役場に到着して、受付のソファーで待ちます。
  2. ほぼ同時に証人2名も到着します。
  3. 公証役場の職員の方が、遺言者本人に証人を引き合わせてくれます。
  4. 時間になると、遺言者本人と証人2名が公証人のデスクに呼ばれます。デスクを公証人、遺言者本人、証人2名が囲みます。
  5. 公証人から問いかけられて、遺言者本人が、氏名・生年月日・住所を言います。
  6. 公証人から問いかけられて、遺言者本人が、遺言の主旨を言います。
  7. 公証人が、文案を一字一句読み上げます。
  8. 公証人から問いかけられて、遺言者本人が文案の内容に「間違いありません」と言います。
  9. 公証人の指示で、遺言者本人が遺言公正証書の原本に署名(氏名のみ)し、実印を押印します。
  10. 証人2名が遺言公正証書の原本に署名し、認印を押印します。
  11. 公証人から「遺言は考えが変われば作り直せる」「遺言の効力発生は死後だから、それまでは財産を自由に処分できる」などと説明を受けます。
  12. 遺言者本人と証人2名が受付に戻されます。
  13. 遺言本人から証人2名に、報酬(礼金)を支払います。ここで、証人2名は帰ります。
  14. 公証役場の職員の方から、遺言者本人に遺言公正証書の正本と謄本が交付されます。また、遺言者本人は公証役場の手数料を支払います。
  15. 以上で終了で、所要時間15分です。

B公証役場の場合

  1. 約束の時間の少し前に公証役場に到着して、受付のソファーで待ちます。
  2. ほぼ同時に証人2名も到着します。
  3. 公証人によって、遺言者本人のみが面談ブースに呼ばれます。
  4. 公証人から遺言者本人に、「遺言公正証書は原本・正本・謄本の3種類があり、原本に公証人・遺言者本人・証人2名が署名押印を行い、原本は遺言者本人の印鑑証明書と共に公証役場に保管され、正本と謄本が遺言者本人に交付される」旨の説明をします。
  5. 公証人が面談ブースに証人2名を呼びます。これで面談ブースには、公証人・遺言者本人・証人2名が揃います。
  6. 公証人から問いかけられて、遺言者本人が、指名・生年月日・住所を言います。
  7. 公証人が、文案を一字一句読み上げます。
  8. 公証人から問いかけられて、遺言者本人が文案の内容に「間違いありません」と言います。
  9. 公証人の指示で、遺言者本人が遺言公正証書の原本に署名(氏名のみ)し、実印を押印します。
  10. 証人2名が遺言公正証書の原本に署名し、認印を押印します。
  11. 公証役場が事前立替で用意してくれた証人宛の報酬(礼金)を遺言者から証人に手渡します。ここで、証人は帰ります。
  12. 遺言者本人が公証役場に、公証人手数料と前項の立替金を支払います。
  13. 公証人から、遺言者本人に遺言公正証書の正本と謄本が交付されます。
  14. 以上で終了で、所要時間20分です。

まとめ
公証役場によって、進行は少し違う部分もあるようですが、A公証役場でも、B公証役場でも以下の3つは共通です。

  • 遺言者本人が氏名・生年月日・住所を言うこと。
  • 公証人が文案を一字一句読み上げるので、遺言者本人が「(その内容に)間違いない」と言うこと。
  • 遺言者本人が署名し、実印を押印すること。

なお、今回ご紹介したケースは、遺言者本人が心身ともに健康な方でした。心身が健康でない方の場合は、どのような進行になるのか筆者には分かりません。

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離婚協議書のはなし(その2)

弊事務所には、離婚協議書の案件がしばしば持ち込まれます。

今回のエントリーでは、離婚協議書について、一般的な事柄をご紹介いたします。

まずは、離婚協議書には何を書けばよいのか、から。

・夫婦二人が離婚に合意していること
・子どもの親権者を誰にするか
・子どもの面会交流はどのように行うか

この3つは絶対必要です。

・子どもの養育費について
・財産分与について

これも必要でしょう。

・年金分割をするのかしないのか
・慰謝料

このあたりは、必要に応じて。

これらの項目について、各自の状況に応じて、夫婦で話し合います。
例えば、養育費の支払い期間は一般的には子どもが成人する二十歳までですが、子どもを大学まで進学させたいと考えているなら二十二歳まで、あるいは大学卒業までにするというように。

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次は、誤解の多い事項についてです。

【その1】
強制執行については、誤解があると思います。強制執行できるのは金銭にかかわる事柄だけです。
子どもとの面会交流の条項があっても、面会の強制執行はできません。
金銭ではないから強制執行できないというのもありますし、子どもの福祉の面からも無理強いは禁物です。

(誤解の例)
妻が一人で来所。「月に2~3日、子どもを離婚後の夫に預けることができるという条項を入れたい」との要望でした。
よくお話を聞いていくと、夫は「子どもに会ってもいいが、自分の家に泊まらせるのは嫌」と言っているとのこと。
妻から「元夫が嫌がったら強制執行できるんですよね」と尋ねられました。
できませんとお答えしました。

【その2】
誤解とは言えないかもしれませんが。
「離婚協議書」は、別名「離婚給付契約書」ともいいます。
当事者が契約(約束)したことを明文にしたものが契約書です。離婚協議書は、夫婦間の契約書です。
契約書の大原則に、契約は当事者しか拘束しないというものがあります。
したがって、契約(約束)行為に参加していない第三者を契約書に登場させることはできません。

(誤解の例)
妻が一人で来所。養育費を取りはぐれないように、「別れた夫が支払わなければ夫の父(義父)に養育費を払ってもらう」という条項を入れたいとの要望でした。
この場合は、義父にも契約に参加してもらい、署名をもらわなければなりません。
「では義理のお父様からもお話しを伺いたい」と言ったら、「また来る」と言ってそれっきりでした。

なお、調べてみると、保証人を立てるような離婚協議書もあるにはあるらしいのですが、公正証書を希望する場合に公証人によっては拒否されることもあるそうです。

【その1】【その2】のどちらも、妻が一人で来所なさいました。
前回のエントリーに詳しく書いてありますが、行政書士は弁護士と違い、妻または夫のどちらか一人の代理はしません。
つまり妻や夫のどちらかに肩入れして片方に都合の良い契約書を作ったりはしません。
弊事務所には妻と夫がそろってお越しくださるとありがたいです。

【その3】
誤解で一番多いと思うのは、公正証書についてです。離婚協議書と公正証書が別のモノだと思っていらっしゃるようです。

離婚協議書は、作成方法によって次の2タイプがあります。
1.夫婦自身で作る離婚協議書(行政書士などに離婚協議の内容を伝えて、文案・書面の作成依頼をする場合も含む)
2.公証役場で作る離婚協議書

項2が公正証書であり、且つ離婚協議書です。別のモノではありません。

公正証書とは、公証人という公務員が作成する文書で、公文書としての証明力と執行力を持っています。
このため公正証書に前出の強制執行の認諾文言を入れておくことで、養育費などの金銭債務の支払いが滞ったときに容易に強制執行ができるようになります。

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離婚協議書のはなし(その1)

弊事務所には、離婚協議書の案件がしばしば持ち込まれます。
今回のエントリーでは、行政書士と離婚協議書の関わりをご紹介します。

行政書士は、離婚する当事者の協議の内容を聴いて、その内容を文書化するのが仕事です。
弁護士さんと違って行政書士は妻または夫のどちらか一方の立場を代理することはできません。

例えば。

妻が一人で弊事務所にお越しになり「財産分与がこれだけしかないんです。これって少ないですよね?」とおっしゃられても、「ほんと。少ないですね。」とか「もっと取れますよ。」とはお答えできません。財産分与の額は、結婚後に二人で築いた財産の二分の一ですという一般論を述べさせていただいております。

養育費についても、裁判所が作成した養育費の目安の表をご覧になっていただいています。

現実に「もっと取ってやる」と息巻いていた方がいらっしゃいました。

しかし、冒頭で述べた通り、行政書士事務所は当事者の協議の内容を文書化する場所ですので、できれば当事者全員で協議の内容を淡々をお話いいただきたいと思います。

当事者が協議した内容をお伝えいただければ、行政書士は、文章を整序し、契約書の形式にて文書を作成いたします。

蛇足ですが、離婚協議の内容は、離婚給付契約です。契約だから契約書の形式にする訳です。

話しは変わります。
行政書士と離婚協議書の関わりで、特に分かりにくいのが、公正証書の離婚協議書であろうと思います。

離婚協議書の文案(または協議内容のメモ)を作成し、公証役場に持って行くと公証人が離婚協議書の公正証書を作成してくれます。
分かりにくいのは、公証人が公正証書の離婚協議書を作ってくれるのだから、行政書士は関与する場面がないのでは?という点であろうと思います。

実は、この文案作成と公証役場の手配をを行政書士に依頼することで手続きをスムーズに進めることができます。

弊事務所のお客さまで、ご夫婦で文案も何も持たずに公証役場に行ったら、まず行政書士のところへ行くように言われたという方がいらっしゃったこともあります。

このケースでは、弊事務所は、ご夫婦から協議の内容をヒアリングし、離婚にまつわる諸手続きをご案内しつつ、文案を作成して公証役場に取り次ぎをさせていただきました。

なお、離婚にまつわる諸手続きのご案内というのは、戸籍の話しであったり、離婚後の子どもの氏の話しであったり、多岐に渡ります。抜け漏れや誤解などは、適切に助言いたします。

まとめますが、行政書士と離婚協議書の関わりは、当事者の協議の内容を聴いて、その内容を文書化するところにあります。公正証書の離婚協議書の場合は、最終的な文書化は公証人が行いますが、その前段で行政書士が文案を作成することができます。また、お客さまに抜け漏れや誤解などがある場合には、適切に助言を行い、スムースな手続きに貢献しています。(次回エントリーに続く)

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